相続税の申告は、制度上は相続人自身が行うこともできます。しかし実際には、申告を行う人の大半が税理士に依頼しているのが実情です。本記事では、自分で申告できるケースと、税理士に依頼したほうがよいケースの判断基準を整理します。

自分で申告している人はどれくらいいるか

国税庁の統計によれば、相続税申告のうち税理士が関与している割合は8割を超える水準で推移しています。所得税の確定申告とは異なり、相続税申告は一生のうち何度も経験するものではなく、財産評価の専門知識が求められるため、税理士に依頼する人が多数派となっています。

自分で申告しやすいケース

  • 相続財産が現金・預貯金が中心で、不動産や非上場株式がない
  • 相続人の数が少なく、遺産分割で揉める要素がない
  • 基礎控除額に対して財産総額が明らかに近く、評価額の変動が税額に大きく影響しない
  • 申告期限まで十分な時間的余裕がある

税理士への依頼を検討すべきケース

  • 土地を相続した場合:土地の評価は路線価や形状による補正が絡み、専門知識がないと適正な評価が難しい領域です
  • 非上場株式(自社株)がある場合:会社の規模区分や純資産価額の算定など、複雑な評価プロセスが必要です
  • 二次相続を見据えたい場合:一次相続の分割方法次第で、将来の二次相続の税額が大きく変わります
  • 相続人間で意見が分かれている場合
  • 過去に生前贈与があった場合:生前贈与加算の対象になるかどうかの判定が必要です
  • 申告期限まで余裕がない場合

自分で申告するデメリット

自分で申告する最大のリスクは、土地評価の誤りによる過大申告、または特例の見落としです。税理士が過去に見直した申告書の多くで土地評価の誤りが発見されているとの報告もあり、評価額を適切に抑えられるかどうかで納税額に大きな差が生じることがあります。また、税務署は税理士が関与していない申告書をより慎重に確認する傾向があるため、税務調査の対象になりやすい面もあります。

実務のポイント

「自分でできるかどうか」よりも、「税理士に依頼した場合の報酬と、節税・リスク低減の効果を比較してどちらが得か」という視点で考えることをおすすめします。特に土地や非上場株式が含まれる相続、二次相続を見据えた分割を検討したい相続では、初回の相談だけでも早めに受けておくと、後の選択肢が広がります。