日本の相続税は、原則として被相続人の財産すべてに課税され、海外にある財産も例外ではありません。海外資産の相続には、通常の申告にはない評価や届出のルールが加わります。

海外資産の評価方法

海外の不動産・預金・有価証券なども、原則として国内財産と同じ財産評価基本通達に基づいて評価しますが、時価の算定が難しい場合は、相手国の不動産鑑定士による評価や、購入価格をベースにした見積価額を使うこともあります。海外の不動産は、路線価のような公的な評価指標がないため、実務上は現地の不動産業者や鑑定士の協力が必要になることが多くあります。

外国税額控除で二重課税を防ぐ

海外資産が相手国でも相続税・遺産税等の課税を受けた場合、日本の相続税額から一定額を控除できる「外国税額控除」があります。日本と外国の両方で課税される二重課税を防ぐための制度で、控除額は「外国で課された税額」と「その国外財産に対応する日本の相続税額」のいずれか少ない方です。

「国外財産調書」の提出義務

毎年12月31日時点で5,000万円を超える国外財産を保有する居住者は、翌年6月30日までに「国外財産調書」を税務署に提出する義務があります。相続が発生した年分については、相続した国外財産を記載せずに提出することも可能です。この調書を期限内に正しく提出していれば、後日その財産について申告漏れが発覚しても過少申告加算税等が5%軽減される一方、未提出や記載漏れがあると5%加重されるという、インセンティブとペナルティの両方が設けられています。

税務署は海外資産をどう把握しているか

「海外の財産は申告しなければ分からない」と考えるのは危険です。国税庁は、各国税務当局との情報交換(CRS:共通報告基準)、国内金融機関からの国外送金等調書、そして納税者自身が提出する国外財産調書・財産債務調書という複数のルートから海外資産の情報を収集しています。CRSにより、非居住者の金融口座情報(氏名・住所・残高等)が各国税務当局間で自動的に交換される仕組みが既に整っています。

実務のポイント

海外資産の相続は、評価方法の確認、外国税額控除の計算、国外財産調書の提出義務の判定など、通常の相続税申告に比べて論点が多くなります。相手国の税制や現地専門家との連携が必要になることもあるため、海外資産が関わる相続は、国際相続の実務経験がある税理士に早めに相談することをおすすめします。