中小企業の経営者が自社株を後継者に相続・贈与させる際、非上場株式の評価額が高額になりやすく、後継者に多額の納税負担が生じることがあります。事業承継税制(特例措置)は、この納税を猶予・最終的に免除する制度で、期限管理が特に重要です。
制度の概要
後継者が非上場会社の株式を相続・遺贈または贈与により取得した場合、経営承継円滑化法の認定を受けることを前提に、その株式に係る相続税・贈与税の納税が猶予されます。後継者が経営を継続し、一定の要件を満たし続ければ、最終的に猶予税額が免除されます。特例措置では、対象株式数の上限が撤廃され、猶予割合は100%です(一般措置は対象株式に上限があり猶予割合も80%にとどまります)。
2026年7月時点で押さえるべき2つの期限
手続き | 期限 |
|---|---|
特例承継計画の提出 | 2027年9月30日まで(延長後) |
実際の贈与・相続(承継の実行) | 2027年12月31日まで |
特例承継計画の提出期限は延長が重ねられてきましたが、承継を実行する期限(2027年12月31日)は延長されない方針が示されています。特例承継計画を提出していても、この実行期限までに実際の贈与・相続が行われなければ特例措置は適用されません。
主な要件
- 会社:中小企業基本法上の中小企業に該当する非上場会社であること(資産管理会社等は原則対象外)
- 先代経営者:会社の代表者であったことがあり、贈与・相続の直前に代表権を有していたこと
- 後継者:相続・贈与後に代表権を有し、同族関係者と合わせて筆頭株主となること
適用後も続く継続義務
認定を受けた後も、都道府県庁への年次報告書、税務署への継続届出書の提出が必要です(申告後5年間は毎年、6年目以降は3年に1度)。後継者が代表を退いたり株式を譲渡したりするなど、要件を満たさなくなった場合は、猶予されていた税額に利子税を加えて納付する必要が生じます。
利用を判断する際の視点
事業承継税制は自社株評価額が高い会社ほど効果が大きい一方、後継者の経営継続や届出義務など長期にわたる管理負担も伴います。将来的にM&Aや会社の売却・組織再編を検討している場合は、猶予の取消リスクを事前に確認しておく必要があります。株価が比較的低い会社では、あえて制度を使わず生前贈与や暦年贈与で対応したほうがシンプルなケースもあります。
実務のポイント
特例承継計画の作成には認定経営革新等支援機関(税理士等)の指導・助言が必要で、準備に数ヶ月かかることも珍しくありません。自社株評価、株主構成の整理、後継者選定、遺留分対策などを並行して進める必要があるため、利用を検討する経営者は早めに専門家へ相談することをおすすめします。