婚姻届を出していない内縁関係(事実婚)のパートナーは、どれだけ長く連れ添っていても、法律上は相続人になれません。何も対策をしなければ、パートナーは遺産を一切受け取れないため、生前の準備が特に重要です。

なぜ内縁のパートナーには相続権がないのか

法定相続人になれるのは、戸籍上の配偶者と一定の血族に限られます。内縁関係は事実上夫婦同然の生活を送っていても、婚姻届を提出していないため、法律上は「他人」として扱われ、相続権も遺留分もありません。

財産を残すための5つの方法

①遺言書による遺贈

最も確実な方法です。「〇〇(パートナーの氏名)に財産を遺贈する」と遺言書に明記すれば、法定相続人でなくても財産を取得できます。ただし、他に法定相続人(子・親等、兄弟姉妹を除く)がいる場合、その人たちの遺留分を侵害しないよう配慮して内容を決めることが重要です。

②生前贈与

年110万円までの基礎控除の範囲内であれば贈与税がかかりません。内縁のパートナーは法定相続人ではないため、相続開始前の生前贈与加算(3〜7年以内の持ち戻し)の対象にもならないという利点があります。ただし、贈与の事実を証明するため、贈与契約書の作成をおすすめします。

③生命保険の受取人にする

生命保険会社によっては、一定期間の同居や生計同一の実態確認などの条件を満たせば、内縁のパートナーを受取人に指定できます。保険金は遺産分割協議を経ずに直接受け取れるため、確実性の高い方法です。ただし、受け取った保険金は「みなし相続財産」として相続税の課税対象になります。

④特別縁故者としての財産分与

被相続人に法定相続人が誰もいない場合に限り、家庭裁判所に申し立てて認められれば、特別縁故者として財産を取得できる可能性があります。ただし、法定相続人がいれば使えない方法で、確実性も低いため、あくまで最後の手段です。

⑤婚姻して法律婚にする

婚姻届を提出すれば、配偶者として当然に法定相続人になり、配偶者の税額軽減など税制上の優遇も受けられます。

財産を受け取る際の税務上の不利な扱い

内縁のパートナーが遺贈や生命保険金を受け取る場合、法律婚の配偶者と異なり、次の優遇が一切使えません。

  • 相続税の2割加算:法定相続人でも配偶者・子・父母でもないため、税額が2割加算されます
  • 配偶者の税額軽減:適用対象外
  • 生命保険金の非課税枠(500万円×法定相続人の数):適用対象外で受取額全額が課税対象
  • 小規模宅地等の特例:原則として適用対象外

法律婚の配偶者と同居していた同じ自宅・同じ財産額であっても、内縁関係というだけで税負担が大きく重くなる点は、対策を考える上で必ず押さえておくべきポイントです。

住まいの保護(相続人がいない場合)

被相続人が賃借していた住居に同居していた場合、相続人がいなければ、借地借家法により内縁の配偶者も同様の同居人として賃貸借契約を承継できる規定があります。ただし確実な保護ではなく、事前の対策のほうが望ましいとされています。

実務のポイント

内縁関係のパートナーに確実に財産を残したい場合、遺言書の作成が最も重要な対策です。他の法定相続人がいる場合は遺留分への配慮も必須になるため、税務・法務の両面から専門家に相談し、遺言・生前贈与・生命保険を組み合わせた対策を早めに進めておくことをおすすめします。