「相続税の申告さえ終われば一安心」と思われがちですが、申告後にも税務調査が入る可能性があります。相続税の税務調査は決して特別な人だけに来るものではなく、正しい知識と準備があれば過度に恐れる必要はありません。

いつ来るのか

税務調査は、申告書を提出してから1〜1年半後に行われることが多く、税務署の人事異動や確定申告業務が落ち着く8〜12月に実施されやすい傾向があります。申告から2年以上経過すると調査の可能性は徐々に下がりますが、相続税の時効(原則5年、悪質な場合は7年)を迎えるまでは調査の可能性が残ります。

対象になりやすい人の特徴

  • 相続財産の総額が大きく、遺産が多い場合
  • 不動産や非上場株式など、評価が複雑な財産が含まれる場合
  • 被相続人名義以外の口座(名義預金の疑い)がある場合
  • 被相続人の生前の所得(給与・配当・家賃収入等)に見合う財産が申告されていない場合
  • 相続人自身が税理士に依頼せず申告書を作成した場合(形式的な不備が起きやすい)
  • 申告書に計算ミスや添付書類の不足がある場合
  • 特例を使って税額がゼロになったにもかかわらず、無申告のまま放置している場合

税務署は無作為に調査先を選ぶのではなく、金融機関や法務局などから収集した情報と申告内容を照合し、事前に入念な調査を行った上で対象を選定しています。

当日の流れ

実地調査が行われる場合、着手の1〜2週間前に税務署から日時・場所の連絡があります。当日は相続人全員の立ち会いが求められることが一般的です(高齢や遠方等の事情があれば考慮されることもあります)。

  • 午前:聞き取り調査。被相続人の職業歴・財産形成の経緯・生活費・入院時の状況・相続開始直前の出金の使途などが質問されます
  • 午後:午前の受け答えを踏まえ、通帳や貴重品の保管場所の確認が行われます
  • 終了後:不審点や申告漏れについて指摘があれば、修正申告の勧奨を受けることが一般的です

質問には誠実に答えることが基本ですが、被相続人本人しか知り得ない内容については、無理に推測で答える必要はありません。

調査後のペナルティ

実地調査で申告漏れなどの非違が指摘される割合は8〜9割と高く、指摘された場合は過少申告加算税(10〜15%程度)または、財産の隠蔽・仮装が認められれば重加算税(35〜40%程度)が課され、あわせて延滞税も発生します。

実務のポイント

税務調査を回避する最も有効な方法は、正しく漏れのない申告を行うことです。税理士が関与し申告書に署名がある申告は、形式的な不備が少なく、税務署からの調査対象になりにくい傾向があります。財産の把握漏れがないよう、預金・不動産・生命保険・過去の贈与などを漏れなく確認したうえで申告することが、最善の防御策です。