相続税は他の税目に比べて実地調査の割合が高く、令和4年度の実地調査では申告漏れの指摘率が8割前後に達しています。事前に流れと質問内容を知っておくことで、落ち着いて対応できます。

調査までの流れ

  1. 税務署から電話または書面で事前通知(希望日の1〜2週間前が目安)
  2. 申告を依頼した税理士がいれば税理士に、いなければ相続人本人に連絡が入る
  3. 調査日程・場所(原則として被相続人の自宅)を調整
  4. 調査当日、午前中はヒアリング中心、午後は通帳・印鑑等の現物確認
  5. 1日〜2日程度で終了し、後日「質問応答記録書」への署名を求められる

調査は任意調査ですが、正当な理由なく拒否すると罰則の対象になり得るため、事実上は協力が前提です。

よく聞かれる質問の傾向

  • 被相続人の職業・経歴・趣味・交友関係(財産形成の背景を把握するため)
  • 被相続人の生前の判断能力(認知症の有無など、贈与の有効性に関わる)
  • 預貯金の入出金の経緯(多額の出金があれば使途を確認)
  • 子・孫名義の口座の存在と、その管理・通帳の保管者
  • 金融機関との取引状況、印鑑の保管状況
  • 不動産・書画骨董・美術品の有無

調査官は雑談のような自然な会話の中からも情報を集めるため、世間話に見える質問にも意味があると考えておくとよいでしょう。押印を求められた印鑑の朱肉なしでの照合や、通帳の書き込みの確認なども、名義預金の有無を判断する材料になります。

特に確認されやすいポイント

  • 名義預金:子・孫名義の口座であっても、実質的な管理者が被相続人であれば申告漏れを指摘されます
  • 生前贈与:相続開始前の一定期間内の贈与(持ち戻し対象)が正しく申告に反映されているか
  • 不動産の評価:特に路線価と実勢価格の差が大きい都市部の土地は評価誤りが起きやすい
  • 非上場株式・ゴルフ会員権:評価が複雑な財産は誤りが生じやすい

事前に準備しておくべき書類

  • 相続税申告書一式(提出した控え)
  • 被相続人・相続人の預貯金通帳(過去数年分)、印鑑
  • 不動産の登記事項証明書、固定資産税評価証明書
  • 生命保険証券、有価証券の取引残高報告書
  • 遺産分割協議書
  • 被相続人の経歴・収入がわかる資料(源泉徴収票、確定申告書の控え等)

当日の心構え

  • 調査官は公務員のため、接待や特別な用意は不要
  • 質問応答記録書への署名はその場で即断せず、内容を確認してから対応する
  • その場で判断に迷う質問は、税理士を通じて後日回答するという対応も可能
  • 感情的にならず、事実に基づいて落ち着いて回答する

税理士に依頼するメリット

申告時から税理士に依頼していれば、税務調査にもその税理士が立ち会います。自分で申告した場合でも、事前通知を受けた段階で税理士に相談し、立ち会いを依頼することが可能です。「書面添付制度」を利用して申告していた場合、税務調査の前に税理士への意見聴取だけで済み、実地調査自体が省略されるケースもあります。

実務のポイント

税務調査は「悪いことをしたから来る」ものではなく、財産状況や資金の流れに疑問点がある場合に確認のため行われるものです。日頃から通帳・証券・不動産関係の書類を整理しておき、名義預金や生前贈与について正確に申告しておくことが、調査への最も効果的な備えになります。