日本では2026年7月現在、同性婚は法制化されておらず、自治体のパートナーシップ制度を利用していても、同性パートナーには法律上の相続権がありません。長年連れ添っていても、対策をしなければ財産は一切残せない点に注意が必要です。

パートナーシップ制度では相続対策にならない

多くの自治体が導入しているパートナーシップ制度は、公営住宅への入居など一定の行政・民間サービスを受けやすくする効果はありますが、法的な婚姻関係を生じさせるものではありません。証明書を持っていても、相続における法定相続人としての地位は得られない点をまず理解しておく必要があります。

対策をしないことで生じる主なリスク

  • 自宅からの退去:同居していた自宅がパートナー名義の場合、相続人がその所有権を取得し、明け渡しを求められる可能性がある
  • 預貯金の凍結:共同生活費として使っていた口座がパートナー名義の場合、相続人の手続きなしには引き出せなくなる
  • 財産の取得:生前に財産を渡す約束をしていても、対策がなければすべてパートナーの親族(法定相続人)に渡る

主な対策方法

①公正証書遺言

パートナーに確実に財産を残す最も基本的な方法です。法定相続人ではないため「遺贈する」という文言を使い、公正証書遺言として作成することで、形式不備による無効リスクを避けられます。他に法定相続人がいる場合は、遺留分への配慮が必須です。

②死因贈与契約

「自分が死亡したらこの財産を贈与する」という契約をパートナーと結んでおく方法です。遺言と異なり双方の合意による契約のため、内容の実現に一定の安定感がありますが、口頭ではなく死因贈与契約書として書面化しておくことが望ましいとされています。

③養子縁組

パートナー同士で養子縁組をすれば、法律上の親子関係が生じ、法定相続人としての地位(遺留分を含む)を得られます。ただし、年長者が養子になることは民法で禁止されているため、年少のパートナーが養子になり、養親の戸籍・姓に入ることになります。また、養子縁組をすると、多くの自治体のパートナーシップ制度は「親族でないこと」を要件としているため、利用できなくなる点にも注意が必要です。

④生命保険の受取人指定

保険会社によっては、一定の条件(同居期間の実績等)を満たせば、同性パートナーを死亡保険金の受取人に指定できます。遺産分割協議を経ずに直接受け取れる点がメリットですが、相続人でないため生命保険金の非課税枠は使えず、受取額全額が相続税の課税対象になります。

最後の手段:特別縁故者

被相続人に法定相続人が誰もいない場合に限り、パートナーが家庭裁判所に特別縁故者として申し立て、財産の分与を受けられる可能性があります。ただし、法定相続人がいれば使えず、確実性も高くないため、生前の対策の代わりにはなりません。

税務上の不利な扱い

法定相続人でないため、遺贈や生命保険金を受け取る場合、相続税の2割加算の対象になり、配偶者の税額軽減・小規模宅地等の特例も原則として使えません。財産の多寡によっては、法律婚の配偶者と比べて大きな税負担の差が生じる点も踏まえて対策を検討する必要があります。

実務のポイント

同性パートナーへの財産承継は、遺言・死因贈与・養子縁組・生命保険のそれぞれにメリットと制約があり、家族関係や将来の見通し(同性婚制度の動向等)によって最適な組み合わせが変わります。法務・税務の両面から、早めに専門家に相談して備えておくことをおすすめします。