会社経営者の相続では、個人が加入する生命保険とは別に、会社(法人)を契約者・受取人とする生命保険が使われることがあります。個人の相続税とは異なる、法人税の課税関係を理解しておくことが重要です。

法人契約の生命保険とは

法人が契約者となり、役員や従業員を被保険者とする生命保険です。経営者が急死した場合の事業継続資金の確保や、死亡退職金・弔慰金の原資として活用されます。契約者・被保険者・保険金受取人の組み合わせによって、保険料の経理処理と保険金受取時の課税関係が変わります。

保険料支払い時の経理処理(死亡保険金受取人が法人の場合)

  • 定期保険(掛け捨て型):受取人が法人でも遺族でも、原則として保険期間の経過に応じて損金算入します。ただし、解約返戻金が大きい契約は、最高解約返戻率に応じて資産計上期間・資産計上額が細かく定められています
  • 終身保険:受取人が法人の場合、支払った保険料は資産計上(保険料積立金)となり、損金にはなりません
  • 養老保険(死亡・満期保険金ともに法人が受取人):全額を資産計上します

養老保険で死亡保険金の受取人を被保険者の遺族、満期保険金の受取人を法人とする契約(いわゆるハーフタックスプラン)では、保険料の2分の1を福利厚生費として損金算入し、残り2分の1を資産計上する扱いになります(役員・特定の使用人のみを被保険者とする場合は給与とされることがあります)。

死亡保険金を法人が受け取ったときの課税

法人が死亡保険金を受け取ると、それまで資産計上していた保険料積立金との差額が「雑収入」として益金に算入され、法人税の課税対象になります。この益金は、遺族に支払う死亡退職金や弔慰金の金額と相殺できるため、実務では次の目安を参考に死亡退職金・弔慰金の額を設定し、法人税の負担を抑える設計がよく行われます。

  • 死亡退職金の目安:最終報酬月額 × 役員在職年数 × 功績倍率
  • 弔慰金の目安:役員報酬の6ヶ月分程度(業務上死亡の場合は3年分程度)

遺族が受け取る死亡退職金・弔慰金の個人側の課税

法人が保険金を原資に遺族へ支払う死亡退職金は、遺族(相続人)にとって「みなし相続財産」として相続税の課税対象になります。死亡退職金の非課税枠(500万円×法定相続人の数)が適用できます。弔慰金についても、一定の基準内(業務上死亡は普通給与の3年分、業務外死亡は6ヶ月分)であれば非課税で、超える部分は死亡退職金として扱われます。

契約形態による個人課税の違い(参考)

個人が契約する生命保険の場合、契約者・被保険者・受取人の関係によって次のように課税関係が変わります。

  • 契約者=被保険者、受取人=相続人:相続税
  • 契約者=受取人、被保険者=別人:所得税(一時所得)
  • 契約者・被保険者・受取人が三者とも異なる:贈与税

法人契約の保険とは別に個人でも生命保険に加入している場合、両方の契約形態を混同しないよう整理しておくことが重要です。

実務のポイント

法人契約の生命保険は、保険の種類・契約者・被保険者・受取人の組み合わせによって経理処理と課税関係が大きく変わる、専門性の高い分野です。事業承継や経営者の相続対策として活用する場合は、法人税・所得税・相続税の3つの側面から、税理士と設計段階から相談しながら進めることをおすすめします。