離婚・再婚を経た家庭の相続は、「血縁関係」「婚姻関係」「養子縁組の有無」という3つの要素が絡み合い、誰が相続人になるのか分かりにくくなりがちです。基本ルールを押さえておくことがトラブル防止の第一歩です。
元配偶者には相続権がない
離婚すると法律上の婚姻関係は解消されるため、元配偶者には相続権が一切ありません。離婚後にどれだけ年月が経っていても、再婚していてもいなくても、元配偶者が元夫・元妻の遺産を相続することはありません。
元配偶者との間の子には相続権がある
親子関係は離婚によって消滅しません。そのため、離婚した元配偶者との間に生まれた子は、離婚後に一度も会っていなくても、第1順位の法定相続人として相続権を持ちます。現在の配偶者との子と同じ立場です。
例えば、被相続人に現配偶者との子2人と、元配偶者との子2人がいる場合、法定相続分は配偶者1/2、子4人で残り1/2を均等に分けます(子1人あたり1/8)。元配偶者との子が既に死亡していても、その子(被相続人の孫)が代襲相続人として相続権を引き継ぎます。
再婚相手の連れ子には自動的な相続権はない
再婚相手に連れ子がいても、婚姻届を出しただけでは連れ子との間に法律上の親子関係は生じません。血縁関係も婚姻関係もない連れ子は、自動的には相続人になりません。連れ子に相続権を持たせるには、「養子縁組」が必要です。
養子縁組による連れ子への相続権の付与
養子縁組をすると、連れ子は法律上の子として実子と全く同じ相続権・法定相続分を持ちます。手続きは市区町村役場への「養子縁組届」の提出で、未成年の連れ子を養子にする場合でも、実親の配偶者の連れ子であれば家庭裁判所の許可は不要です。
養子縁組をすると、相続税の基礎控除額を計算する際の「法定相続人の数」にも含めることができます(実子がいる場合は養子1人まで、実子がいない場合は2人まで)。
養子縁組をしない場合に連れ子へ財産を渡す方法
- 遺言書で遺贈する:「連れ子○○に財産を遺贈する」と遺言書に記載すれば、養子縁組をしなくても財産を渡せます。ただし相続人ではないため、相続税の2割加算の対象になります
- 生前贈与:年110万円までの基礎控除の範囲であれば贈与税をかけずに移転できます
- 数次相続:再婚相手(連れ子の実親)が被相続人の死亡直後に死亡した場合、その相続分を連れ子が代わりに取得する結果になることもあります
元配偶者との子に相続させたくない場合の注意点
現在の家族にすべての財産を残したいと考えても、元配偶者との子には「遺留分」があるため、遺言で相続分をゼロにしても、最低限の取り分を遺留分侵害額請求として金銭で請求される可能性があります。完全に排除することは基本的にできないため、遺留分を踏まえた遺言内容にしておくことが、後日の紛争を避けるポイントです。
実務のポイント
離婚・再婚を経た家族構成の相続は、面識のない相続人同士が遺産分割協議に参加しなければならないケースが多く、トラブルに発展しやすい分野です。連れ子への財産承継の意向がある場合は養子縁組か遺言の活用を、現在の家族に多く残したい場合は遺留分への配慮を、早い段階で検討し、専門家に相談しながら遺言書を整えておくことをおすすめします。