小規模宅地等の特例は原則として「同居していた親族」が対象ですが、被相続人に配偶者も同居親族もいない場合、別居していた親族でも要件を満たせば適用できる「家なき子特例」があります。2018年の改正で要件が大幅に厳格化されており、現在の正確なルールを理解しておく必要があります。
現在の適用要件(すべて満たす必要あり)
- 被相続人に配偶者がいないこと:戸籍上の配偶者がいれば、長年別居していても「配偶者あり」と判定され、この特例は使えません
- 相続開始の直前に被相続人と同居していた法定相続人がいないこと:相続放棄をした人がいた場合も、放棄がなかったものとして判定します
- 相続開始前3年以内に、自己・自己の配偶者・自己の3親等以内の親族・自己と特別の関係がある法人が所有する国内の家屋に居住したことがないこと
- 相続開始時に居住している家屋を、過去に一度も所有したことがないこと
- 相続税の申告期限まで、その宅地を所有していること
2018年改正で追加された2つの要件
改正前は「自己または配偶者の持ち家」に住んでいないことだけが要件で、それ以外の持ち家(親族名義・関連会社名義等)は問題になりませんでした。しかし、この抜け穴を利用した節税策が横行したため、次の2つが追加されました。
- 3親等以内の親族・特別な関係のある法人の持ち家も対象に:子や孫、あるいは自分が経営する関連会社の名義にした家に住んでいる場合も、「持ち家がある」とみなされるようになりました
- 相続開始時に住んでいる家を過去に所有していないこと:自分の持ち家を子や孫に名義変更し、そこに住み続けて「形式上、持ち家がない」状態を作る節税策を封じるための要件です
改正前に横行していた節税策の具体例
- 自分の持ち家を子(被相続人の孫)名義に変更し、そこに住み続ける
- 一人暮らしの親が孫を養子縁組し、孫に実家を相続させる(孫自身は別の持ち家に住んでいない体裁を取る)
- 関連会社名義の社宅に住み、個人としての持ち家をなくす
これらはいずれも2018年改正後は対象外となっています。一方、大学進学や就職で実家を出て3年以上賃貸暮らしをしており、親と同居していなかった子や孫が相続するケースは、改正後も引き続き適用可能です。
見落としやすいポイント
- 「配偶者名義の家」も持ち家扱い:夫名義のマイホームに住んでいる妻自身は所有者でなくても、要件3(配偶者の持ち家)に該当するため対象外です
- 相続後に居住を始めても問題ない:重視されるのは「相続開始までの3年間、どこにどう住んでいたか」であり、相続後にその家に住み始めても適用に影響はありません
- 申告期限までの「貸付」は問題ない:所有さえ続けていれば、申告期限までの間にその不動産を賃貸に出しても要件は満たされます
- 税額ゼロでも申告が必須:この特例を適用して相続税がゼロになる場合も、申告書の提出は必須条件です
老人ホーム入居時との組み合わせ
被相続人が要介護認定等を受けて老人ホームに入所していた場合でも、一定要件を満たせば「配偶者・同居親族がいない」状態とみなされ、家なき子特例の対象になり得ます。老人ホーム入居後に自宅が空き家になっているケースは、家なき子特例が使われる典型的な場面の一つです。
必要な添付書類
- 相続開始前3年以内に居住していた家屋が、自己・配偶者・3親等内親族・特別関係法人の所有でないことを証明する書類(賃貸借契約書の写し等)
- 相続開始時に居住している家屋を過去に所有していたことがないことを証明する書類
- 相続人の戸籍の附票(居住場所の履歴を確認するため)
実務のポイント
家なき子特例は、要件が2018年の改正で大幅に厳格化され、以前は使えた節税策の多くが封じられました。「賃貸暮らしだから使えるはず」と自己判断せず、配偶者・親族・関連会社の持ち家の有無まで含めて、過去3年間の居住実態を正確に確認することが重要です。適用可否で税額が数百万〜数千万円変わることもあるため、判断に迷う場合は早めに税理士に相談することをおすすめします。