◆ 30秒でわかる要約
- 土地と土地、建物と建物を交換する取引は、税務上は売買と同じく譲渡として扱われ、原則課税される
- 6つの要件をすべて満たせば「固定資産の交換の特例」により譲渡がなかったものとされ、交換時の譲渡所得課税が繰り延べられる
- 要件の一つに「同じ種類の資産同士」があり、土地建物と土地の交換では建物部分に特例が使えない
- 交換で取得した資産は、交換前の資産の取得費・取得時期をそのまま引き継ぐため、将来売却時の税負担に影響する
1. 「交換」も税務上は「譲渡」の一種
相続した土地が不整形で使いにくい場合や、借地権・底地の関係を整理する場合に、隣接地や権利の一部を交換することがあります。隣接する土地の所有者同士で、使い勝手をよくするために土地を交換する——このような取引は珍しくありません。しかし税務上、固定資産の交換は原則として資産の譲渡として扱われ、含み益がある場合は譲渡所得税が課税されます。「お金のやり取りがないから税金は関係ない」という認識は誤りです。
固定資産の交換特例は永久的な免税制度ではありません。交換時の譲渡所得課税を将来に繰り延べる制度です。この負担を避けるために設けられているのが「固定資産の交換の特例」であり、一定の要件をすべて満たせば、交換によって譲渡がなかったものとして扱われ、交換時の譲渡所得課税が繰り延べられます。
2. 実務のポイント
(1) 満たすべき6つの要件
この特例を受けるには、次の要件をすべて満たす必要があります。
- 交換により譲渡・取得する資産が、いずれも固定資産であること(不動産業者の販売用の棚卸資産は対象外)
- 譲渡・取得する資産が同じ種類(土地と土地、建物と建物)であること
- 譲渡する資産を1年以上所有していたこと
- 取得する資産は、交換の相手方が1年以上所有していたもので、かつ、交換のために取得したものではないこと
- 取得する資産を、譲渡する資産の交換直前の用途と同一の用途に使用すること
- 譲渡資産と取得資産の時価の差額(交換差金)が、いずれか高い方の時価の20%以内であること
1つでも欠けると特例は使えず、通常の譲渡として全額が課税対象になります。なお、交換差金が高い方の資産価額の20%以内であっても、受け取った交換差金自体は譲渡所得の課税対象になります。20%以内だから交換差金まで非課税になるわけではありません。
(2) 「同じ種類」でないと特例は使えない——土地建物と土地の交換に注意
土地建物と土地を交換した場合、総額が等価であっても、建物部分についてはこの特例が使えません。建物を取得した側は建物の時価相当額を交換差金として受け取ったものとされ、建物を譲渡した側も単なる建物の譲渡として扱われます。さらに、取得する建物の価額が譲渡する土地の価額の20%を超える場合は、土地についても特例の適用が受けられなくなる点は特に見落とされやすいポイントです。契約書に等価と記載しただけでは足りません。周辺取引事例、不動産鑑定、固定資産税評価額等を踏まえ、交換時点の客観的な時価を合理的に説明できる資料を保存しておく必要があります。
(3) 用途を変えると特例から外れる
取得した資産は、譲渡した資産の交換直前の用途と同一の用途に使用する必要があります。土地であれば宅地・田畑・山林・原野など、建物であれば居住用・店舗事務所用・工場用・倉庫用といった区分で用途が判定されます。交換で取得した土地をすぐに転用・転売してしまうと、この要件を満たさず特例の対象外となる可能性があります。取得資産は、原則として交換した年分の確定申告期限までに、交換前の資産と同一用途に供する必要があります。
(4) 特例を使うと「取得費・取得時期」を引き継ぐ
取得資産の取得費は、原則として交換前の資産の取得費を基礎に計算され、取得時期も引き継がれます。交換差金がある場合は所定の調整計算が必要です。例えば30年前に3,000万円で取得した土地を交換した場合、交換後の新しい土地の取得費は、交換時の時価ではなく引き継いだ3,000万円を基礎に計算されます。この新しい土地を数年後に売却すると、想定より大きな譲渡益が計上され、税負担が重くなることがあります。特例を使うかどうかは、将来の売却予定まで見据えて判断する必要があります。
(5) 適用は当事者ごとに個別判定——片方だけ特例を使わないことも可能
この特例は交換の当事者双方に自動的に適用されるものではなく、各人ごとに個別に判定・選択されます。一方が特例の適用を受けても、もう一方が受けないという組み合わせも可能です。交換後すぐに転売する予定がある側はあえて特例を使わず通常の譲渡として申告する、といった使い分けも実務上行われています。
(6) 特例を使うには確定申告が必要
固定資産の交換特例は自動的に適用されません。交換した年分の確定申告書に、譲渡所得の内訳書などの必要書類を添付して申告する必要があります。この特例は所得税上の制度です。適用できる場合でも、不動産取得税、登録免許税、印紙税、司法書士報酬、測量費用等が発生することがあります。