◆ 30秒でわかる要約
- 不動産小口化商品(任意組合型・信託受益権型)は、購入価額に対して相続税評価額が2〜3割程度に圧縮できる高い節税効果があった
- 令和8年度税制改正により、2027年1月1日以後の相続・贈与からは「取得時期を問わず」通常の取引価額(時価)で評価されることになった
- VOL.7で扱った一棟賃貸不動産の「5年ルール」とは異なり、小口化商品には保有期間による猶予が一切ない
- 遺産分割のしやすさという節税以外のメリットは今後も維持される
1. なぜ小口化商品がここまで人気だったのか
不動産小口化商品は、不動産特定共同事業法などに基づき、都心の一等地にある一棟マンションやオフィスビルといった高額不動産を1口100万円〜1,000万円単位で購入できるようにした投資商品です。任意組合型・信託受益権型は現物不動産と同様の評価方法(土地は路線価、建物は固定資産税評価額)が適用されるため、購入価額に対して相続税評価額が2〜3割、都心の一等地では1割程度にまで圧縮できるケースがありました。VOL.9で扱ったタワマン規制(2024年施行)が居住用の区分所有建物に限定されていたのに対し、事業用オフィスなどを対象とする小口化商品はこの規制の対象外だったため、規制を回避した節税商品として活用が広がっていた経緯があります。
1,000万円の現金贈与では贈与税が約177万円かかるところ、圧縮率80%の小口化商品を使えば贈与税は約9万円に、圧縮率90%であれば無税になるケースもあったとされ、この評価ギャップの大きさが国税庁に問題視される結果となりました。
2. 実務のポイント
(1) 2027年1月1日以後は「取得時期を問わず」時価評価
令和8年度税制改正により、任意組合型・信託受益権型の不動産小口化商品は、令和9年(2027年)1月1日以後に相続・遺贈・贈与により取得する分から、取得時期にかかわらず、相続開始時または贈与時における「通常の取引価額」で評価されることになりました。「通常の取引価額」は、事業者が示す処分価格・買取価格、売買実例価額、定期報告書に記載された不動産価格などを参考に算定されます。
(2) 一棟マンションの「5年ルール」より厳しい
同じ令和8年度改正で導入された一棟所有の貸付用不動産に対する規制(VOL.7参照)は、取得から5年を経過すれば従来どおりの評価方法に戻るという猶予がありました。ところが小口化商品にはこの猶予が一切なく、保有期間の長短を問わず、恒久的に時価評価が求められます。5年以上前に購入して保有し続けている商品であっても、2027年1月以降に相続が発生すれば時価評価の対象となる点は、既に商品を保有しているオーナーにとって特に重要な情報です。
(3) 駆け込み贈与にも「総則6項」のリスクが残る
「2027年1月以降の適用なら、2026年中に贈与しておけば従来の評価で済む」と考えるのは早計です。財産評価基本通達6項(いわゆる総則6項)は、通達どおりの評価が著しく不適当と認められる場合に、個別に時価評価へ引き直すことを認める規定であり、今回の改正でこの通達自体の見直しも方針として示されています。駆け込みでの多額の贈与は、評価額自体は従来どおりでも、この総則6項による否認リスクを別途抱えることになります。金額が大きい贈与を検討する場合は、このリスクを踏まえたシミュレーションが欠かせません。
(4) 節税メリットは薄れても「遺産分割のしやすさ」は残る
評価方法の見直しにより、節税目的での購入は今後大きく減少すると見込まれますが、不動産小口化商品には1口単位で少額から購入・保有できるという特性があります。この特性は、複数の相続人に公平に分けやすいという遺産分割対策としての価値を引き続き持っています。「節税効果がなくなったから小口化商品に意味がない」というわけではなく、目的を節税から遺産分割対策へ切り替えて検討する余地は残ります。
(5) 既存保有者は早めのシミュレーションを
既に不動産小口化商品を保有している場合、2027年1月以降の相続でどの程度評価額が変わるのか、現時点で一度試算しておくことをお勧めします。評価額の上昇に応じて、生前贈与への切り替え、他の資産構成との組み合わせ、小規模宅地等の特例の活用可否など、対応の選択肢は複数考えられます。改正の詳細は今後公表される通達次第で変わる部分もあるため、最新情報を踏まえた継続的な見直しが必要です。