◆ 30秒でわかる要約
- 2024年4月1日より前に発生した相続でも、未登記であれば2027年3月31日までに相続登記が必要——過去の相続にも遡って適用される
- 正当な理由なく期限を過ぎると10万円以下の過料の対象になるが、即座に科されるわけではなく法務局からの催告が先行する
- 遺産分割が長引く場合は「相続人申告登記」という簡易な応急措置で、いったん義務を果たしたとみなせる
- 2026年4月からは住所・氏名変更登記も義務化され、2026年2月からは全国の不動産を一括検索できる新制度も始まっている
1. 「昔からの名義のまま」が通用しなくなった
日本には所有者不明土地が国土の約2割にのぼるとされ、その大きな原因が相続登記の放置でした。これを解消するため、2024年4月1日に不動産登記法が改正され、相続で不動産を取得したことを知った日から3年以内に相続登記を申請することが法律上の義務になりました。正当な理由なく怠ると、10万円以下の過料の対象になります。
重要なのは、この義務化が施行日より前に発生した相続にも遡って適用されるという点です。「祖父の代からずっと名義変更していない」「何十年も前に相続した土地が放置されている」というケースも、対象から逃れられません。
2. 実務のポイント
(1) 過去の相続の期限は「2027年3月31日」
施行日(2024年4月1日)より前に発生していた相続で、まだ登記していない不動産については、施行日から3年後にあたる2027年3月31日までに相続登記を行う必要があります。施行日以降に発生する新しい相続については、それぞれ「不動産の取得を知った日から3年以内」が期限となります。長年放置されてきた不動産をお持ちの方にとって、この2027年3月末という期限は特に重要です。
(2) 過料は「催告」を経てから——いきなり科されるわけではない
期限を過ぎたからといって、即座に10万円の過料が科されるわけではありません。実際の流れは、法務局(登記官)が未登記の不動産を把握した場合にまず相続人へ登記申請を促す催告を行い、それでも正当な理由なく応じない場合に地方裁判所へ通知し、裁判所が過料を科すかどうかを判断するという段階を踏みます。「知らなかった」「忙しかった」は正当な理由として認められにくい一方、相続人が多数で戸籍収集に時間がかかる場合や、遺言の有効性を巡る争いがある場合などは、正当な理由として考慮される余地があります。
(3) 遺産分割が長引くなら「相続人申告登記」で応急対応できる
相続人同士の話し合いが長引き、期限内に正式な相続登記が難しい場合は、相続人申告登記という簡易な制度が利用できます。自分がその不動産の相続人の一人であることを法務局に申し出るだけで、ひとまず登記申請義務を果たしたとみなされます。ただしこれはあくまで暫定措置であり、所有権の移転を伴わないため物件の売却や担保設定はできません。遺産分割が成立したら、その成立日から改めて3年以内に、正式な相続登記を行う必要があります。
(4) 相続税の申告期限(10か月)とは別物——両にらみの対応が必要
相続登記の期限は3年ですが、相続税の申告・納税期限は原則10か月です。小規模宅地等の特例や配偶者の税額軽減など強力な節税規定の多くは、申告期限までに遺産分割が完了していることが適用の前提となります。相続登記の猶予(相続人申告登記や3年という期限)に安心して遺産分割協議を先延ばしにすると、税務上の期限を逃してしまうリスクがあります。登記の期限と税務の期限は別のタイムラインで進んでいる点を意識した対応が必要です。
(5) 2026年の関連改正も押さえておく
2026年2月2日からは、氏名・住所を指定して全国の不動産を一括検索できる「所有不動産記録証明制度」が始まっており、自分がどこにどの不動産を所有しているかを一覧で確認しやすくなりました。また、2026年4月1日からは、婚姻や転居による氏名・住所の変更についても変更登記が義務化され、変更から2年以内に登記しないと5万円以下の過料の対象となります。相続登記だけでなく、こうした周辺制度も併せて把握しておくことをお勧めします。