◆ 30秒でわかる要約
- 2023年の法改正で、「特定空家」の一歩手前の段階を捉える「管理不全空家」という区分が新設された
- 従来は特定空家の勧告だけが対象だった固定資産税の住宅用地特例の解除が、管理不全空家の勧告でも生じるようになった
- 特例が解除されると、小規模住宅用地(200㎡以下)の固定資産税評価額は6分の1から通常評価額に戻り、税負担が最大6倍になり得る
- 「たまに訪れて通水・通電している」実態があれば、原則として空家等の対象にはならない
1. VOL.2・VOL.27の続き——放置のペナルティが強化された
VOL.2では空き家の3,000万円特別控除、VOL.27では相続放棄後の管理義務を扱いました。今回は、空き家を「放置した場合」に何が起きるかという、より実務的な論点です。2015年に施行された空家等対策特別措置法は、危険な状態の空き家を「特定空家等」に指定し、助言・指導・勧告・命令という段階を踏んで改善を促す仕組みを設けていました。
しかし、既に老朽化が進んだ段階で指定しても改善が困難なケースが多かったことから、2023年の法改正により、特定空家になる前の予備軍を捉える「管理不全空家」という区分が新設され、より早い段階からの対応が求められるようになりました。
2. 実務のポイント
(1) 「特定空家になる恐れ」の段階から勧告対象になる
特定空家等は、倒壊のおそれや衛生上の有害性など、既に危険な状態にある空き家を指します。これに対し管理不全空家等は、適切な管理が行われていないことで、そのまま放置すればいずれ特定空家等になるおそれがある状態を指します。行政のアプローチは「助言・指導→勧告→命令」と段階を追って厳しくなり、指導に従わず勧告を受ける段階で、税務上の重いペナルティが生じます。
(2) 勧告を受けると「住宅用地特例」が解除される
固定資産税には、居住用の土地の税負担を軽減する「住宅用地の特例」があり、200㎡以下の小規模住宅用地は評価額が6分の1に、200㎡を超える一般住宅用地は3分の1に軽減されています。従来この特例の解除は特定空家等の勧告のみが対象でしたが、2023年改正により管理不全空家等として勧告を受けた場合にも解除されるようになりました。正確には「固定資産税が新たに6倍になる」のではなく、「これまで受けていた軽減措置が外れ、本来の税額に戻る」という理解が正確です。
(3) 「使う見込みがない」だけでも特例の対象から外れることがある
総務省の通知では、勧告の有無にかかわらず、構造上住宅と認められない状況、使用の見込みがなく取壊しを予定している場合、居住に必要な管理を怠り今後居住の見込みがないと認められる場合には、そもそも特例の対象となる「住宅」に該当しないとされています。つまり、正式な勧告を受けていなくても、賦課期日(毎年1月1日)時点の家屋の状態次第で、市区町村の判断により特例が適用されないケースがあり得る点は見落とされがちです。
(4) 「たまに訪れて通水・通電している」実態があれば対象になりにくい
実務上のポイントとして、年に数回程度であっても定期的に訪れ、通水・通電の実績があり人の出入りが確認できる場合は、原則として「常態的に住んでいない・使用していない」という空家等の定義に該当しないとされています。逆に、家族が「セカンドハウス」「別荘」と呼んでいても、実際には何年も足を運んでおらず水道・電気の使用実績もない場合は、空家等と判定される可能性があります。定期的な通水・通電の実績を残しておくこと自体が、管理不全空家等の指定を避ける現実的な対策の一つになります。
(5) 勧告後も改善しなければ「命令」「行政代執行」まで進む
勧告を受けても改善せず放置を続けると、法的義務を伴う「命令」が発せられ、命令に違反すると50万円以下の過料の対象になり得ます。それでも改善されない特定空家等については、最終的に自治体が行政代執行により強制的に解体を行い、その費用を所有者に請求することもあります。固定資産税の増額だけでなく、こうした一連の行政措置全体を見据えた早めの対応が重要です。専門業者による定期巡回・換気・通水サービスの活用や、VOL.2で扱った空き家の3,000万円特別控除を使った早期売却の検討も、有効な選択肢になります。