◆ 30秒でわかる要約
- 民泊(住宅宿泊事業)による所得は、通常の賃貸と異なり原則「雑所得」に区分される
- 専ら民泊で生計を立てているなど事業性が明らかな場合は「事業所得」、賃貸の合間の一時利用なら「不動産所得」に含めてよい
- 宿泊料には消費税が課税される——住宅の長期賃貸が非課税なのとは対照的
- 自宅の一部を民泊にすると、固定資産税の住宅用地特例の適用範囲が縮小する可能性がある
- 本記事は主として住宅宿泊事業法に基づく民泊を対象とし、旅館業法の簡易宿所・特区民泊は別途確認が必要
1. 「賃貸」とは違う扱いになる理由
相続した実家や空き家をそのまま活用する方法として、民泊(住宅宿泊事業)の検討が増えています。民泊は、清掃・アメニティの提供・宿泊者対応など、単なる場所貸し以上のサービスを伴うことが多く、税務上は通常の不動産賃貸とは性質が異なるものとして扱われます。国税庁は2018年、住宅宿泊事業法(民泊新法)の施行にあわせて所得区分の考え方を公表しており、これが現在も民泊の税務判断の基本になっています。
「賃貸物件を民泊に転用しただけ」という感覚で税務処理をすると、所得区分や消費税の扱いで想定と異なる結果になることがあります。
2. 実務のポイント
(1) 民泊の所得は原則「雑所得」——不動産所得ではない
民泊による所得は原則として雑所得です。ただし、営業規模、継続性、人的・物的設備、管理体制などを総合し、社会通念上事業として行われていると認められる場合は、事業所得となる可能性があります。清掃代行、アメニティ提供、宿泊者対応などのサービスが伴うため、単純な不動産の貸付けとは性質が異なると位置づけられている点も、雑所得区分の背景にあります。不動産賃貸業を営む人が、入居者の退去後から次の賃貸借契約までの一時的な空室期間に限って民泊へ利用する場合は、その収入を不動産所得に含めて差し支えないとされています。雑所得は他の所得との損益通算ができない点で、不動産所得・事業所得と大きく異なるため、どの区分に該当するかは損益通算の可否に直結する重要な論点です。
(2) 宿泊料には消費税がかかる——住宅の長期賃貸は非課税なのに
通常の住宅の貸付けは原則として消費税非課税ですが、貸付期間が1か月未満の場合や、旅館業に係る施設の貸付けに該当する場合は課税対象です。住宅宿泊事業の宿泊料は、ホテルや旅館と同様に消費税の課税売上となります。同じ建物を使っていても、通常の賃貸として貸すか民泊として貸すかで消費税の扱いが変わり得る点は見落とされやすいポイントです。基準期間の課税売上高が1,000万円を超える場合は、原則として消費税の課税事業者となります。1,000万円以下でも、インボイス登録、特定期間の判定、課税事業者選択などにより申告・納税義務が生じることがあります。
(3) 経費は「業務用部分」だけを合理的に按分する
自宅の一部を民泊に使う場合、水道光熱費・通信費・固定資産税などの共通経費は、支出の内容に応じ、民泊に使用した床面積割合と実際の民泊日数などを組み合わせて合理的に按分します。国税庁資料も、共用経費について床面積割合と民泊日数を用いる計算例を示しています。仲介手数料や管理会社への支払いなど、民泊のためだけに支出する費用は全額を必要経費に算入できますが、家事関連費は按分計算を怠ると税務調査で否認されるリスクがあります。専用部分・専用期間を示す予約台帳、図面、請求書と按分の算出根拠は、後日の税務調査に備えて記録・保存しておくことをお勧めします。
(4) 自宅の一部を民泊にすると固定資産税の住宅用地特例が縮小する可能性
住宅用地には固定資産税評価額を大きく減額する「住宅用地の特例」がありますが、これは住宅として使われている部分に適用されるものです。住宅用地特例の取扱いは、毎年1月1日の利用実態、家屋の構造・用途、住宅部分の床面積などを基に市区町村が判定します。民泊を始めただけで一律に特例が外れるとは限らないため、用途変更前に所在地の資産税担当課へ確認してください。「民泊を始めても固定資産税は変わらない」という思い込みも禁物です。
(5) 住宅ローン控除
まず、床面積の2分の1以上を自己の居住用に供するという住宅ローン控除の要件を満たすかを確認します。そのうえで、控除対象借入金残高は原則として住宅ローン残高に居住用部分の割合を乗じて計算します。民泊に利用している日数が年間合計でおおむね1か月未満であれば家屋全体を居住用として扱う取扱いは、この按分計算に関する例外です。
(6) 居住用財産の3,000万円特別控除
民泊に利用していた自宅を売却する場合、居住用財産の3,000万円特別控除は、居住の用に供している部分に限って適用されます。売却時に居住用以外の部分がある場合は、家屋の構造、設備、実際の利用状況を総合的に判断し、原則として居住用部分に対応する譲渡益だけが控除対象になります。ただし、家屋または敷地のうち居住の用に供していた部分の割合がおおむね90%以上である場合は、その家屋・敷地の全体を居住用として特例を適用できる取扱いがあります。図面、宿泊日数、利用実態から割合を確認してください。以前住んでいた自宅を転居後に民泊へ利用した場合でも、居住しなくなった日から3年を経過する日の属する年の12月31日までに売却するなどの要件を満たせば、3,000万円特別控除を利用できる可能性があります。
(7) 海外の民泊サイトに支払う手数料にも注意
Airbnbなど海外の民泊仲介プラットフォームに支払う手数料は、消費税法上の「国外事業者からの事業者向け電気通信利用役務の提供」に該当し得るため、原則としてリバースチャージ方式の対象です。ただし当分の間、一般課税で課税売上割合が95%以上の課税期間や、簡易課税制度または2割特例を適用する課税期間は、特定課税仕入れがなかったものとして申告に含めません。契約書・請求書で役務の提供者と取引区分(事業者向けか消費者向けか)を確認したうえで、課税方式と課税売上割合を踏まえて判定することをお勧めします。
本記事は、主として住宅宿泊事業法に基づく民泊を前提としています。旅館業法の許可を受けた簡易宿所や特区民泊では、所得区分や法規制の判断が異なる場合があります。