現金を不動産に組み替えることで相続税評価額を圧縮する対策は、古くから行われてきた手法です。しかし2024年の評価ルール改正により、特にタワーマンションを使った節税効果は縮小しています。

なぜ不動産は相続税対策になるのか

不動産の相続税評価額は、路線価方式や倍率方式によって計算され、一般に時価(市場価格)の7〜8割程度の水準になります。現金1億円をそのまま持っているより、1億円で不動産を購入したほうが、相続税の課税対象となる評価額を抑えられる、という仕組みです。賃貸に出せば、貸家建付地・貸家としての評価減も加わり、評価額をさらに圧縮できます。

タワーマンション節税とその規制

タワーマンションの高層階は、専有面積に対する敷地の持分割合が小さいため、従来の評価方法では評価額と市場価格の乖離が特に大きくなる傾向がありました。この乖離を利用した節税策が「タワマン節税」と呼ばれ、問題視されてきました。

2024年1月1日以後に取得した居住用の区分所有マンションについては、「区分所有補正率」という新ルールが導入され、評価額が市場価格の6割程度の水準まで引き上げられる補正がかかるようになりました。この改正により、特に築浅・高層階のマンションでは、評価額の圧縮効果が大きく縮小しています。

改正後も不動産対策に一定の効果がある理由

区分所有補正率の導入後も、不動産の評価額が市場価格の6割程度に抑えられる仕組み自体は残っているため、現金のまま保有するより相続税評価額を抑える効果はあります。また、一戸建てや、区分所有補正率の対象外となる低層マンション・団地型物件では、この改正の影響を受けにくい傾向があります。

総則6項による否認リスク

区分所有補正率の対象にならない一戸建てや低層物件であっても、相続開始直前の駆け込み購入・相続直後の売却など、租税回避の意図が明白なケースでは、財産評価基本通達の「総則6項」により、路線価等による評価が否認され、鑑定評価額などの高い時価で課税されるリスクがあります。過去の最高裁判決でも、行き過ぎた不動産購入による節税が否認された事例があります。

実務のポイント

不動産購入による相続税対策は、評価額の圧縮効果と、実需(実際に住む・貸す)としての合理性のバランスが重要です。相続開始が迫った時期に、明らかに節税だけを目的とした高額物件を購入するような対応は、総則6項による否認リスクが高まります。生前から時間をかけて計画的に進める、実際に賃貸経営として成り立つ物件を選ぶといった視点を持つことが、リスクを抑えた対策につながります。