孫への生前贈与は、税制上いくつかの優位性があり、相続対策として活用されています。ただし、思わぬ形で課税対象になるケースもあるため、正しく理解して進める必要があります。

孫への贈与が有利とされる理由

暦年贈与の生前贈与加算(相続開始前3〜7年以内の贈与を相続財産に持ち戻す制度)は、原則として「相続人」への贈与が対象です。孫は通常、法定相続人ではないため、この持ち戻しの対象外になります。つまり、相続開始の直前に贈与しても、相続財産に加算されない場合が多いということです。また、「親→子→孫」と2段階でかかるはずの相続税を、孫への直接贈与で1段階に減らす「一代飛ばし」の効果も期待できます。

生前贈与加算の対象になってしまう例外ケース

孫であっても、次のいずれかに該当する場合は生前贈与加算の対象になります。

  • 代襲相続人となった孫(親が先に死亡し、孫が代わって相続人になる場合)
  • 養子縁組により法定相続人となった孫(孫養子)
  • 遺言により遺贈を受けた孫
  • 生命保険金・死亡退職金の受取人に指定されている孫

保険金の受取人を孫にしている場合、生前贈与を行っていても、その孫は「みなし相続財産」を取得したことになり、持ち戻しの対象になってしまう点に注意が必要です。

孫が相続・遺贈で財産を受け取ると2割加算になる

孫養子や遺贈で財産を取得する孫(代襲相続人を除く)は、相続税の2割加算の対象です。生前贈与で財産を移すか、相続・遺贈で財産を渡すかによって、税負担が大きく変わることがあるため、事前の比較検討が重要です。

具体的な贈与方法

  • 暦年贈与(年110万円):孫ごとに毎年コツコツ贈与できるシンプルな方法。孫が18歳以上であれば、特例税率(一般税率より低い)が適用されます
  • 相続時精算課税:18歳以上の孫であれば選択可能。2,500万円までの特別控除に加え、年110万円の基礎控除も利用できます
  • 都度贈与(生活費・教育費):必要な都度、生活費や教育費として渡す分は贈与税の対象外です

名義預金と判定されないための注意点

孫名義の口座に振り込んでいても、孫自身がその口座の存在を知らず、通帳・印鑑を祖父母が管理していると「名義預金」とみなされ、贈与が否定されるリスクがあります。贈与の都度、贈与契約書を作成し、孫本人(未成年の場合は親権者)が口座を管理できる状態にしておくことが重要です。

遺留分への配慮も必要

孫への贈与を優先しすぎると、他の相続人(子など)の遺留分を侵害し、後日のトラブルに発展することがあります。贈与額や対象者を決める際は、家族間で背景を共有しておくことをおすすめします。

実務のポイント

孫への贈与は税制上のメリットが大きい一方、生命保険の受取人設定や養子縁組の有無によって、意図せず不利になることもあります。「誰に」「どの財産を」「どのような方法で」渡すかを、贈与・遺言・保険契約の受取人指定まで含めて総合的に設計することが重要です。