遺言書がない場合、相続人全員の話し合い(遺産分割協議)で決めた内容を書面化したものが遺産分割協議書です。相続税申告だけでなく、不動産の相続登記や金融機関での名義変更にも使う重要書類です。

必ず記載すべき項目

  • 被相続人の氏名・本籍地・住所・死亡日
  • 誰がどの財産を取得するかの明記(預貯金は金融機関名・口座番号、不動産は登記事項証明書の記載どおりの表示)
  • 作成年月日
  • 相続人全員の氏名・住所(印鑑証明書のとおり)と実印での押印

決まった書式はありませんが、相続人が1人でも欠けた状態で作成した協議書は無効になるため、全員の参加・合意が前提です。遠方に住む相続人がいる場合は、電話や郵送でのやり取りで合意を得る方法も可能です。

相続税申告のために特に重要な記載事項

  • 債務・葬式費用の負担者:誰がいくら負担するかを明記しておかないと、債務控除の計算で不都合が生じます
  • 名義預金の記載:被相続人が子や孫名義にしていた実質的な財産(名義預金)も、遺産分割協議書に記載しておくべきです
  • 代償分割を行う場合の代償金:特定の相続人が不動産等を取得する代わりに他の相続人へ現金を支払う場合、その金額を明記します
  • 後日発見された財産の取り扱い:「本協議書に記載のない遺産が発見された場合は〇〇が取得する」と一文入れておくと、再協議の手間を省けます

生命保険金は原則として記載不要

契約者・被保険者が被相続人で、受取人が指定されている生命保険金は、原則として受取人固有の財産として扱われ、遺産分割協議の対象にはなりません。そのため、通常は遺産分割協議書への記載は不要です(ただし契約形態によっては例外もあります)。

作成のタイミング

法律上の作成期限はありませんが、相続税の申告には配偶者の税額軽減や小規模宅地等の特例の適用のために遺産分割協議書の添付が必要です。申告期限(10ヶ月)に間に合わせるため、遅くとも8ヶ月程度を目安に作成しておくことをおすすめします。

未成年者や相続人が多い場合の注意点

相続人の中に未成年者がいる場合、親権者も相続人であるなど利益相反の関係にあるときは、家庭裁判所で特別代理人の選任を受ける必要があります。相続人の人数が多い場合や、全員が一堂に会するのが難しい場合は、各相続人が個別に署名押印する「遺産分割協議証明書」を作成し、後でまとめる方法も利用できます。

実務のポイント

遺産分割協議書は自分で作成することもできますが、不動産の表示や相続人の住所氏名を一字一句間違えると、法務局や金融機関で再作成を求められることがあります。特例適用の可否にも直結する書類のため、相続税申告と合わせて税理士・司法書士に確認してもらうと安心です。