◆ 30秒でわかる要約
- 駐車場・太陽光用地は税務上「雑種地」に区分され、多くは近傍宅地の評価額を基準に評価される
- 駐車場に小規模宅地等の特例を使うには、「建物または構築物」があることが要件——ロープを張っただけの青空駐車場は対象外
- 太陽光発電用地も同様に、単に売電しているだけでは「事業」に該当せず特例の対象外
- 貸付事業用宅地等には相続開始前3年以内に新たに始めた貸付は対象外とする「3年縛り」がある
1. 空いている土地の活用先として定番の2つ
使い道のない土地の活用法として、初期コストが低く安定収入が見込める駐車場経営と、固定価格買取制度を利用した太陽光発電は、長らく定番の選択肢です。しかしこれらの土地は、相続税評価と小規模宅地等の特例の適用可否の両面で、宅地や賃貸アパート用地とは異なる特有の論点があります。
いずれも税務上は「雑種地」に区分され、駐車場・資材置場・ゴルフ場などと同じカテゴリーで扱われます。相続税の地目は登記簿上の地目ではなく、課税時期の現況や隣接地との一体利用の実態によって個別に判定されるため、実際にどの地目・評価単位で評価するかは個々の土地ごとに確認が必要です。
2. 実務のポイント
駐車場・太陽光用地は、「誰が土地を使い、誰が売上を得ているか」によって、小規模宅地等の特例上の扱いが変わります。まず利用形態を次の4つに整理して確認する必要があります。
利用形態 | 特例上の位置づけ(原則) |
|---|---|
自ら駐車場を経営する(自営) | 貸付事業用宅地等に該当し得る |
駐車場業者に土地を貸す | 貸付事業用宅地等に該当し得る |
自ら太陽光発電・売電事業を行う | 事業と評価できる実態があれば特定事業用宅地等に該当する可能性がある |
発電事業者に土地を貸す | 貸付事業用宅地等に該当し得る |
どの区分に当てはまるかによって、減額割合、限度面積、相続開始前3年以内の貸付を除外する「3年縛り」の適用の有無が変わります。貸付事業用宅地等に該当する場合の小規模宅地等の特例は、限度面積200平方メートルまでの部分について評価額を50%減額するものです(特定事業用宅地等に該当する場合は限度面積・減額割合が異なります)。
(1) 雑種地の評価は「近傍地の状況」に引きずられる
雑種地の評価は、原則として、状況が類似する付近の土地(近傍宅地など)について評価した1平方メートルあたりの価額を基に、位置・形状等の条件差を斟酌して評定した価額に地積を乗じて計算します(状況類似地比準)。国税局長が倍率を定めている地域にある雑種地については、固定資産税評価額にその倍率を乗じて評価します。市街化調整区域内にある雑種地は、都市計画法上の建築制限などを反映して、市街化区域内の雑種地より評価額が減価される場合があります。「農地扱いだから評価は低いはず」といった思い込みは通用せず、実際の造成状況・周辺環境・法的規制を踏まえた評価が必要になります。なお、この雑種地の評価方法と、後述する小規模宅地等の特例の適用可否は別の論点です。小規模宅地等の特例は、通常の相続税評価額を計算した後に、一定の要件を満たす部分について一定割合を減額する制度であり、駐車場を舗装したことによって路線価や評価額そのものが直接下がるわけではありません。
(2) 駐車場は「舗装の有無」で小規模宅地等の特例の適用が分かれる
貸駐車場に小規模宅地等の特例(貸付事業用宅地等)を適用するには、その土地上に建物または構築物があることが要件です。ロープや看板だけで区画した青空駐車場は、構築物がないとして特例の対象外とされた実例があります。一方、アスファルト舗装やコンクリート舗装、地面に固定されたフェンスなどは構築物に該当し得ますが、砂利を敷いただけの状態、ロープのみでの区画、可動式(固定されていない)車止めなどは、構築物として認められないことがあります。構築物に該当するかどうかは、素材・工作の種類、地面への固定状況、敷地内での設置範囲などを踏まえて個別に確認する必要があります。「敷地の相当部分に舗装が及んでいること」は法令上定められた数値基準ではなく、あくまで構築物としての利用に必要な範囲や、敷地全体との一体性から個別に判断される実務上の目安です。舗装が敷地の一部にとどまる場合は、対象となる面積がその舗装部分に限定される可能性もあります。
(3) 太陽光発電は「売電しているだけ」では特例の対象にならない
太陽光発電設備の敷地についても、太陽光パネル自体は建物に該当しないため地目は雑種地となり、特定事業用宅地等としての小規模宅地等の特例が問題になります。この特例が適用される事業には、不動産貸付業・駐車場業・自転車駐車場業・準事業は含まれません。ただし、売電収入があるだけで当然に「事業」に該当するわけではありませんが、売電であることだけをもって一律に対象外と決まるわけでもなく、発電設備の規模、設備投資額、保守管理体制、継続性、事業遂行の実態などを踏まえて個別に判断する必要があります。太陽光パネル・架台・基礎等が構築物に該当するかどうかも、舗装の有無だけで自動的に決まるものではなく、個別に確認する必要があります。固定資産税(償却資産)の申告上の資産区分と、小規模宅地等の特例における構築物該当性の判定は、必ずしも同一の基準ではない点にも注意が必要です。
(4) 貸付事業用宅地等には「3年縛り」がある
駐車場や太陽光用地が貸付事業用宅地等として特例の対象になり得る場合でも、相続開始前3年以内に新たに貸付事業を始めた土地は原則として対象外です。相続税対策として駆け込みで土地を駐車場や太陽光用地に転用しても、直前3年以内であれば特例が使えません。ただし、特定貸付事業(事業的規模で行われている貸付事業)を相続開始前3年を超えて継続していた場合は、この除外の対象になりません。「5棟10室基準」はもともと建物の貸付けが事業的規模かどうかを判定するための目安であり、駐車場のように建物を伴わない貸付けについては、契約件数・台数・収入規模・管理の実態などに応じて業態ごとに事業的規模かどうかを別途判定します。また、自ら太陽光発電・売電事業を行っている場合は特定事業用宅地等の枠組みで判定されるため、この貸付事業用宅地等の3年縛りをそのまま当てはめることはできません。土地活用を始めるタイミングは、自分がどの区分に該当するかを踏まえて逆算しておく必要があります。
(5) 貸駐車場は「貸宅地」ではなく「自用地」として評価される
賃貸アパートの土地(貸家建付地、VOL.7参照)とは異なり、貸駐車場は自動車を預かる契約であり、土地そのものの利用権が及ぶわけではないと考えられています。そのため貸駐車場の敷地は、原則として自用地として評価され、貸宅地としての評価減は受けられません。「人に貸しているから評価が下がるはず」という思い込みは、駐車場については当てはまらない点を押さえておく必要があります。ただし、駐車場利用者(事業者)の費用負担で車庫などの堅固な施設を設置することを認める契約になっている場合は、土地そのものの賃貸借と認められ、自用地としての価額から賃借権の価額を控除して評価する例外もあります。契約内容(誰の負担でどのような施設を設置するか)を確認したうえで、どちらの評価方法によるべきかを判断する必要があります。
「相続の直前に舗装工事をすれば特例が使える」という単純な話ではありません。構築物の設置時期・利用実態・継続性、貸付事業としての開始時期、費用対効果などを総合的に確認したうえで判断する必要があります。