◆ 30秒でわかる要約
- 自宅兼事務所の家賃・光熱費・住宅ローン利息は、事業で使った割合(家事按分)だけを経費にできる
- 持ち家で住宅ローン控除を受けている場合、事業用スペースの割合が住居全体の50%を超えると控除が使えなくなる
- 逆に事業使用割合が10%以下であれば、住居全体を100%居住用とみなして控除を全額受けられる
- 住宅ローンの元金部分は経費にならず、利息部分のみが按分の対象になる(VOL.22のデッドクロスと同じ構造)
1. 「生活費」と「事業経費」を切り分ける作業
自宅の一部を事務所として使う個人事業主にとって、家賃・住宅ローンの利息・水道光熱費・通信費・固定資産税などは、生活のためにも事業のためにも発生する費用です。これらを事業に使った割合だけ経費に計上する考え方を「家事按分」といいます。
按分の根拠として最も認められやすいのは床面積による按分です。国税庁のタックスアンサーでも、必要経費に算入できるのは業務の遂行上直接必要であることが明らかにされる部分に限るとされており、間取り図や業務記録など客観的な資料で説明できる割合を設定することが実務上重要です。
2. 実務のポイント
(1) 按分割合は「20〜30%以下」が実務上の目安
家賃・地代家賃の按分割合は、一般的に20〜30%以下であれば税務調査で問題になりにくいとされています。これを超える割合を計上する場合は、事務所専用の個室があることを示す図面や写真など、より強い裏付け資料が必要になります。リビングで家族と過ごしながら時々仕事をする程度のスペースまで按分に含めると、事業に直接必要な部分とは認められにくい点にも注意が必要です。
(2) 持ち家の住宅ローン利息は「元金を除いた利息部分」だけが対象
住宅ローンの返済額のうち、元金部分は経費にならず、利息部分のみが家事按分の対象になります。これはVOL.22で扱ったデッドクロスの構造(元金返済は経費にならず、減価償却費は経費になる)と表裏一体の考え方で、賃貸経営でも自宅兼事務所でも共通する原則です。持ち家の場合はこれに加え、建物の減価償却費や固定資産税・都市計画税も按分対象になり、賃貸の家賃相当分より経費計上できる項目が多くなる傾向があります。
(3) 住宅ローン控除は「事業用50%超」で受けられなくなる
住宅ローン控除には「床面積の2分の1以上が専ら自己の居住の用に供するものであること」という要件があります。つまり、事業用として按分している割合が住居全体の50%を超えると、この要件を満たさなくなり住宅ローン控除自体が受けられなくなります。経費を増やそうと事業使用割合を高く設定しすぎると、かえって住宅ローン控除という大きな税額控除を失うことになりかねません。所得水準やローン残高によっては、按分割合を抑えて住宅ローン控除をフル活用する方が、最終的な手取りが多くなるケースも珍しくありません。
(4) 事業使用割合が「10%以下」なら住宅ローン控除は全額使える
租税特別措置法関係通達により、事業用に使っている割合が10%以下であれば、住居のすべてを自己の居住用として扱ってよいとされ、住宅ローン控除を減額されることなく全額受けられます。事業使用割合が50%を超えなければ控除自体は受けられますが、控除額は事業使用割合に応じて按分され目減りします。「経費を多く取るか、控除を満額取るか」という二者択一ではなく、10%以下・50%以下・50%超という3つの区分でどこに位置するかを踏まえたシミュレーションが必要です。
(5) 床面積の判定は「共有名義」でも全体の面積で見る
夫婦共有名義の住宅の場合、住宅ローン控除の床面積要件は持分割合を乗じた面積ではなく、建物全体の床面積で判定します。マンションであれば、共用スペースを含めない登記簿上の専有部分の床面積が基準です。「持分が半分だから床面積も半分で計算する」といった誤解のないよう、按分計算の前提となる面積の取り方を正しく理解しておく必要があります。