◆ 30秒でわかる要約

  • 親の土地に子が無償で家を建てる「使用貸借」では、贈与税は課税されない
  • ただし相続時の土地評価は、貸宅地ではなく「自用地」として評価される——つまり評価減の効果はない
  • 固定資産税相当額程度の支払いなら、地代を払っていても使用貸借のままとして扱われる
  • 二世帯住宅にして同居要件を満たせば、小規模宅地等の特例で評価額を圧縮できる可能性がある

1. 「タダで借りているだけ」でも税金は絡む

親の土地に子が家を建てる場合、地代も権利金も支払わずに土地を借りる形が一般的です。これを「使用貸借」といいます。使用貸借の場合、土地を使用する権利の価額はゼロとして扱われるため、子が借地権相当額の贈与を受けたとして贈与税が課税されることはありません

しかし問題はその先です。使用貸借されているこの土地は、将来親が亡くなったときに相続税の対象となります。そしてその評価方法が、実務上の重要なポイントになります。

2. 実務のポイント

(1) 使用貸借の土地は「自用地」として評価される

使用貸借されている土地は、他人に賃貸している土地(貸宅地)としてではなく、自分が使っている土地(自用地)として評価されます。以前のコラムで扱った、賃貸マンションの土地(貸家建付地)が評価減を受けられるのとは対照的に、使用貸借という事実だけを理由に借地権相当額を控除することはなく、土地は自用地価額で評価します。ただし、小規模宅地等の特例など別制度の適用可能性は別途判定します。

(2) 固定資産税相当額なら「地代」を払っても使用貸借のまま

「無償はさすがに気が引けるので、固定資産税相当分だけでも渡したい」というケースは多くあります。この程度の金額であれば、通常、賃貸借ではなく使用貸借として扱われます。ただし、固定資産税額は法定の境界線ではありません。支払額、契約内容、地域の地代・権利金慣行などを総合して賃貸借か使用貸借かを判定するため、金額が上がるほど借地権の認定課税の論点(VOL.8参照)が生じ得る点に注意が必要です。

(3) 建物だけ子に贈与すれば、賃貸物件は評価減を維持できることがある

土地は親名義のまま、建物(賃貸アパートなど)だけを子に贈与した場合、土地所有者と貸家所有者が分かれます。この場合の土地評価は、贈与前からの賃貸借の継続、各住戸の入退去、課税時期の賃貸割合、土地の使用関係を個別に確認して判定します。借家人の交代だけで土地全体が直ちに自用地評価になるとは限らないため、住戸単位の事実関係に基づき判定する必要があります。

(4) 二世帯住宅なら小規模宅地等の特例が狙える

使用貸借そのものには評価減はありませんが、親の土地に子が二世帯住宅を建てて同居する形であれば、要件を満たすことで小規模宅地等の特例(特定居住用宅地等)により330㎡まで評価額を80%減額できる可能性があります。適用には、建物の登記が区分所有登記になっているかどうか、相続開始直前の被相続人等の居住実態、宅地を取得する親族の同居・居住継続・保有継続などの要件も満たす必要があり、事前に慎重な確認が必要です。土地を生前贈与で取得した場合、その取得に小規模宅地等の特例は使えません。もっとも、贈与の適否は他の税負担や承継目的も含めて比較してください。

(5) 借主(子)が先に亡くなった場合、相続財産となるのは建物のみ

子が先に死亡した場合、子の相続財産となるのは原則として子所有の建物であり、親所有の土地そのものではありません。子が持つ土地の使用借権は、相続税評価上もともとゼロです。使用貸借は借主死亡で終了するのが原則ですが、その後の建物・土地利用は契約内容と相続人との新たな使用関係を確認する必要があります。