◆ 30秒でわかる要約

  • 共有者間の話し合いがまとまらない場合、裁判所に共有物分割請求訴訟を起こして強制的に解消できる
  • 分割方法には現物分割・代償分割・換価分割があり、税務上の扱いがまったく異なる
  • 1つの土地を持分どおりに切り分ける現物分割は、譲渡がなかったものとして非課税
  • 代償分割・換価分割は通常の売買と同様に譲渡所得税が課税される

1. VOL.11の続き——話し合いがまとまらないときの「最終手段」

VOL.11では、相続で共有になった不動産を換価分割・代償分割で解消する方法を扱いました。しかし共有者間で分割方法の合意ができない場合、各共有者は民法256条に基づき、裁判所に共有物分割請求訴訟を提起して、強制的に共有状態を解消することができます。裁判所は必ず何らかの分割方法を命じる判決を下すため、訴訟を利用すれば共有関係から確実に離脱できます。

裁判所が命じる分割方法には、大きく分けて現物分割・代償分割・換価分割の3パターンがあり、どの方法が採られるかによって税務上の扱いが大きく変わります

2. 実務のポイント

(1) 現物分割は「譲渡がなかったもの」として非課税

共有の土地を分筆し、それぞれの持分に応じて単独所有の土地とする「現物分割」を行った場合、所得税基本通達によりその分割による土地の譲渡はなかったものとして扱われ、譲渡所得税は課税されません。共有物分割は法的性質としては持分の交換・売買にあたるとも考えられますが、共有持分権が資産の一部に集約されただけで経済的実態としての収入の実現がないという考え方から、課税実務上は非課税として扱われています。

(2) 「持分割合とおおむね一致」していることが前提条件

この非課税の扱いを受けるには、分割後のそれぞれの土地の価額の比が、もとの共有持分の割合とおおむね一致している必要があります。面積の比と持分の比が異なっていても、価値の比が持分割合に近ければ現物分割として認められますが、価値の比が持分割合から大きくずれ、その差額を金銭で調整する場合には、その調整金(価格賠償金)に対して譲渡所得税が生じます。逆に調整金の授受がなく価値の差が放置される場合は、贈与税の問題が生じ得る点にも注意が必要です。

(3) 代償分割・換価分割は「通常の売買」と同じ扱い

共有者の1人が他の共有者の持分を取得する代わりに金銭を支払う代償分割、共有物を売却してその代金を分ける換価分割は、いずれも通常の売買と同視され、譲渡所得税が課税されます。現物分割のような非課税措置は適用されません。VOL.11で扱った相続時の分割方法の考え方と基本的に同じ構造ですが、共有物分割訴訟という司法手続きを経る場合でも、税務上の扱いは変わらない点を押さえておく必要があります。

(4) 「異なる土地同士」の共有持分を交換する場合は非課税特例の対象外

複数の異なる土地について、それぞれ共有持分を持ち合っている親族間で、互いの持分を交換して単独所有にするようなケースは、「1つの土地の現物分割」ではなく「異なる資産同士の交換」とみなされ、共有地分割の非課税規定は適用されません。この場合は課税対象となりますが、VOL.16で扱った固定資産の交換の特例の要件を満たせば、その特例により課税を回避できる可能性があります。共有物分割の非課税特例と固定資産の交換特例は似て非なる制度であり、どちらの土俵で検討すべきかをまず見極める必要があります。

(5) 不動産取得税・登録免許税にも独自のルールがある

共有物分割による不動産の取得は、原則として不動産取得税が課税されません。ただし、取得者の分割前の持分割合を超える部分の取得については課税対象となります。登録免許税についても、共有物分割による持分移転登記は原則1,000分の20の税率ですが、分筆登記と同時申請するなど一定の要件を満たせば1,000分の4の軽減税率が適用される場合があります。訴訟による分割であっても、事後の登記手続きにおいてこれらの軽減措置の適用可否を確認しておく価値があります。