◆ 30秒でわかる要約

  • 底地の相続税評価額は更地価格に底地権割合(1−借地権割合)を掛けて算出するが、実際の売却価格はこれよりかなり低くなるのが実務の常識
  • 売却先が借地人であれば更地価格の50%程度まで見込めることもあるが、第三者や投資家だと更地価格の10〜20%程度にとどまりやすい
  • 底地の売却価格は地代の水準に大きく左右される——地代が相場より著しく低いと評価そのものが大きく下がる
  • 相続前に底地を整理しておくことで、相続税評価額と売却額の乖離による負担を避けられる可能性がある

1. 「税務上の評価」と「実際に売れる金額」は別物

底地(借地権が設定された土地)を相続すると、その評価額は更地価格から借地権部分の価値を差し引いた金額、すなわち更地価格×底地権割合(1−借地権割合)で算出されます。借地権割合が60%であれば、底地権割合は40%です。

しかし、この相続税評価額はあくまで税務上の理論値です。底地は所有していても地主が自由に使えず、買主が限られる特殊な資産であるため、実際の売却価格は相続税評価額よりも大幅に低くなるのが実務の常識です。この乖離を理解しないまま相続税を納めてしまうと、「税金は評価額どおり払ったのに、売っても評価額の何割かにしかならない」という事態に直面します。

2. 実務のポイント

(1) 「誰に売るか」で価格が2〜3倍変わる

底地の売却先は主に、借地人本人第三者(投資家・底地買取業者)の2パターンに分かれます。借地人が買い取れば土地・建物の所有者が一致し完全所有権となるため、借地人にとってのメリットが大きく、更地価格の50%程度まで評価されることもあります。一方、借地人以外の第三者や投資家・買取業者への売却は、借地人付きという制約付きの土地としての取引になるため、更地価格の10〜20%程度にとどまるケースが目立ちます。同じ底地でも、売却先次第で査定額が2〜3倍変わり得る点は、底地特有の事情としてまず押さえておくべきです。

(2) 地代の水準が価格を大きく左右する

底地の実勢価格を算定する際、収益還元法(地代収入を将来にわたって見込んだ収益性からの評価)が重要な要素になります。先代が口約束で決めた地代が周辺相場の3分の1以下といった極端に低い水準の場合、収益性が低いとみなされ、評価額がほぼゼロに近いと判断される実例もあります。相続で底地を引き継ぐ場合、まず地代が周辺相場と比べてどの水準にあるかを確認することが、売却可能性を判断する第一歩になります。

(3) 相続前の売却で評価額と実勢価格の乖離リスクを避けられる

底地を相続すると、相続税評価額(更地価格の40%前後)に基づいた相続税を納める必要がありますが、その底地を売却しようとすると、実際に手に入る金額は更地価格の10〜20%程度にとどまることが少なくありません。つまり、底地のまま相続するより、生前に売却しておいた方が最終的な手残りが多くなるケースがあり得ます。地代収入だけの底地は将来にわたって固定資産税・都市計画税の負担が続く一方で収益性が低いため、活用の見込みがなければ早めの売却を検討する価値があります。

(4) 譲渡所得税の計算は他の不動産と同じ枠組み

底地の売却で利益(譲渡所得)が出た場合、他の不動産と同様に譲渡所得税が課税されます。所有期間が5年を超える長期譲渡所得であれば税率約20.315%、5年以下の短期譲渡所得であれば約39.63%と、VOL.15のリースバックでも扱った所有期間5年の壁がここでも適用されます。相続で取得した底地であれば、被相続人の取得時期・取得費をそのまま引き継ぐため、取得費が不明な場合はVOL.1で扱った概算取得費5%の問題にも直面し得る点に注意が必要です。

(5) 共有名義・借地人への告知など実務上の手続きも絡む

底地が複数の相続人による共有名義になっている場合、売却には共有者全員の同意が必要です(VOL.30で扱った共有物分割の論点がここでも関わります)。また、第三者へ売却する際に借地人への事前告知は法律上の義務ではありませんが、後のトラブルを避けるため実務上は行われるのが一般的です。底地の売却は、税務上の損得だけでなく、権利関係の整理という法務面の手続きも同時に進める必要がある点を理解しておくべきです。